ネパールの自然

ネパールの総面積は147,181平方キロメートルで、国境の東、西、南はインドと、北は中国チベット自治区と接しています。最低標高はジャパ郡のカンチャン・カラン(Kanchan Kalan)で海抜70m、最高標高点は言わずと知れたエベレスト山頂の8,848mです。東西の横幅は800km、南北の縦幅はわずか230kmの国です。 しかしこの狭いベルト状の国の中に広がる地質地形は極めてバラエティーに富んだもので、タライ地方(平野部)の亜熱帯性気候からヒマラヤ高峰帯の高山気候まで、信じられない広範囲の気候が凝縮しています。国土の中心となっているのは山岳地帯や丘陵地帯、その間の渓谷帯や湖、そして南部の平原などで、海を持たない内陸国です。世界に14座しかない8,000mを超える高峰のうち、実に8座がネパールにあり、このうちの一つがご存じ、世界最高峰のエベレスト峰です。

またネパールには豊富潤沢な河川があり、一部のチベット源流のものの他は、大半がヒマラヤを水源としています。これらのネパールの河川はすべてインドの河川に注ぎ込んでおり、その殆どは聖なる川と呼ばれるガンジス川へと合流しています。高峰の懐高くには氷河湖と壮観な氷河渓谷がありますが、ここを訪れる人は極めて少数です。最近の自然地理学的な調査によれば、約427万ヘクタール(国土総面積の29%)が森林とされ、156万ヘクタール(同10.6%)が低木地と退化森林帯、170万ヘクタール(同12%)が草原で、農地は300万ヘクタール(同21%)、残る100万ヘクタール(同7%)は不耕作地であるとされています。br />
ネパールの気候条件は、地理的条件によってその場所その場所で異なっています。北方では夏は涼しく、冬は非常に厳しい一方で、南方では夏は典型的な亜熱帯気候を示し、冬は温和です。毎年6月頃から9月頃にかけてのモンスーン時期は、ネパール全土で降雨が見られますが、雨影(Rain Shadow、主として高峰の南斜面にぶつかった雲が雨を落としきり、北側斜面へ渡った時にはほとんど降雨がなくなる現象)と呼ばれる地域では降雨が見られないこともあります。チベット高原にあるネパール国内の街ムスタン等がその一例です。ネパールの森林地帯はその大部分が国立公園や野生動物保護区域として保護されており、ここには絶滅危惧種に指定されている野生生物が数多く生息しています。例えばロイヤルベンガルトラ(Royal Bengal Tiger)や一角サイ(Greater One-horned rhinoceros)が保護区内のあちらこちらで自由に歩き回っている一方で、極めて他種類のほ乳類やは虫類、昆虫や鳥類も雑多に繁殖しており、クマ(bear)、ヒョウ(leopard)、ハイエナ(hyena)、イノシシ(wild boar)、野生のゾウ(wild elephant)、オオトカゲ(monitor lizard)、ワニ(crocodile)、ニシキヘビ(python)、カメ(turtle)等を見ることが出来ます。ネパールには全世界の鳥類の10%が生息していると言われており、カトマンズ渓谷だけでもそのうちの500種類を見ることができます。

水はネパールで最も豊富にある天然資源ですが、河川水利用の大部分は水力発電用です。また水力資源のもう一つの重要な役割として観光資源としての利用が挙げられます。これらはカヤックやラフティングなどアドベンチャースポーツに適した資源として観光利用されています。

ヒマラヤは、単に登山やトレッキングによる収入源となるだけでなく、天然資源も眠っています。水晶やリグナイト(lignite、褐炭)、銅、コバルト、および鉄鉱石等が掘れます。最近では郊外や地方の田園風景に魅せられるトレッカーが増えている一方で、クライマーに対してオープンにされている数々の無名高峰への挑戦者の数も増え続けています。  

ユネスコ 世界遺産

チトワン国立公園
ネパール初の国立公園でもある有名なチトワン国立公園は、内タライの低地地方、チトワン地区、ドゥーン地区に位置しています。公園の領域は、落葉性のサラノキ(沙羅双樹、sal)の森林が覆う丘陵地域・シワリックレンジを含め、総面積932平方kmです。公園の5分の1は、ナラヤニ川、ラプティ川、レウ川の氾濫原野であり、カポック(kapok)の木、アカシア(acacia)、シーサム(sisam)の木などの水系森林が点在し、密集した背の高いエレファントグラスで覆われています。生態学的にも多様なこの領域は、危惧種である300頭以上のアジア一角サイ(Asian one-horned rhinoceros) のネパールにおける最後の居住地であり、絶滅の危機に瀕しているベンガルタイガー(Bengal tiger)が最も多く隠れ住む場所となっています。また、アジア一角サイやベンガルタイガー以外に、チトワンではさまざまな動植物も見ることが出来ます。白い斑点のあるチッタル(シカの一種、chittal)を含む4種類の鹿、ヒョウ(leopard)、ナマケグマ(sloth bear)、猪(wild boar)、アカゲザル(rhesus monkey)、ハイイロヒマラヤヤセザル(grey langur monkey)、山犬(wild dog)、山猫(wild cat)、ホワイトガウル(世界で最も大きい野性の牛、white stockinged gaur)他、たくさんの小動物も生息しています。チトワンの湿地帯や多数ある川の三角洲は、湿地ワニ(marsh crocodile)の生息地となっています。ナラヤニ川には、魚のみを食べる絶滅の危機に瀕しているガリアル(またはガンジスワニ、gharial or Gangetic crocodile)を見ることができます。またここでは、世界に4種類存在する淡水イルカ(freshwater dolphin)の1種が生息しています。鳥類学者やアマチュア野鳥観察家にとっては、450以上の種の生息が記録されているこの国立公園は、大変興味深いところと言えるでしょう。主に生息しているのは、キツツキ(woodpecker)、サイチョウ(hornbill)、ベンガルショウノガン(Bengal florican)、およびズアカキヌバネドリ(red-headed trogon)などの種類ですが、寒い地域から越境して来た水鳥(waterfowl)や、ブラーミンアヒル(Brahminy duck)、オナガガモ(pintail)、インドガン(barheaded geese)などの冬鳥も、国立公園の川で見かけます。夏の森には、ヒタキ(flycatcher)、インドヤイロチョウ(Indian pitta)やインコ(parakeet)など巣篭もりして生息しています。 

サガルマータ国立公園 (エベレスト峰のある公園)
サガルマータ国立公園にはエべレスト(8,848m)、ローツェシャル、チョー・オユー、アマダブラム、プモリ、カンツェガ、ギャチュンカン、タムセルク、コンデ峰、等々が含まれており、世界の自然遺産の中でも特別な存在と言っていいでしょう。カトマンズの北東に位置するサガルマータ国立公園の領域は、ドゥドゥコシ川、ボテコシ川、イムジャコーラ川上流域に渡り、面積は1,148平方キロメートルです。公園の大部分が標高3,000m以上となります。サガルマータ地域は険しい土地で、深い渓谷や氷河、ほとんど通行不可能な氷と岩からなる地表で覆われています。この地域は地元では<クンブ>と言う名前で知られ、有名なシェルパ族の居住区です。シェルパ族は、ジャガイモや大麦を作り、高地牧草地でヤクを飼うなど山岳農業で生計を立てています。また、若いシェルパは、近年地域の共同体経済の中心的支柱となっている登山やトレッキング産業で、名をあげるようになりました。1979年サガルマータ国立公園は、世界遺産として認定されました。

シャクナゲ(rhododendron)、樺(birch)、アオマツ(blue pine)、ジュニパー松(juniper)、エゾマツ(silver fir)などの樹木を、森林限界である標高約4,000m付近まで目にすることが出来、その上は低木や高山性植物帯となります。ナムチェバザール、クムジュン、タンボチェ、ターメ周辺の山腹では、晩春から夏にかけて数種類のシャクナゲ(rhododendron)が花盛りとなります。サガルマータ国立公園内で比較的多く見られる野生動物は、ヒマラヤヤギ(Himalayan Thar)、ゴーラル(シカの一種、ghoral)、ジャコウジカ(musk deer)、ピッカ(野うさぎ、pikka)、イタチ(weasel)などですが、時々ジャッカル(jackal)も出没します。他にめったに見られない珍しい野生動物としては、ヒマラヤツキノワグマ(Himalayan black bear)、オオカミ(wolf)、オオヤマネコ(lynx)、ユキヒョウ(snow leopard)があげられます。一般的に見られる鳥は、テイオウキジ(国鳥のダンフェ、impeyan pheasant)、ベニキジ(blood pheasant)、セッケイ(snow cock)、ユキバト(snow pigeon)、赤くちばしと黄くちばしのベニバシガラス(billed chough)、ヒマラヤハゲワシ(Himalayan griffon)、ヒゲワシ(lammergeyer)などです。