多様なネパールの生態系

ネパールの生態系の多様性は、そもそのこの国が地理的に独特の位置にあり、地形にためにそれぞれの土地の高度が変化に富み、その結果、気候もあちらこちらで不揃いなことに起因しています。保護区域は国土面積の19.42%にあたる28,585.67平方キロメートルにも及び、国立公園が9ヶ所、野性動物保護区は3つ、保護地域が3つ、狩猟指定区が一つ、さらに9つの緩衝地帯が設けられています。 主な生物資源のシェアは次の通りです(%,主要種のみ): 水陸両生動物1.0/鳥類9.3/ハ虫類1.6/ほ乳類4.5

ネパールの動物

ほ乳類
ネパール国内の様々な場所で全185種のほ乳類の存在が確認されています。 バルディア国立公園で大量に見られたアジアゾウ(Asiatic elephant)は、今では非常に少なくなっています。この国立公園は、西部タライ地方からインドのコルベット国立公園へと至るゾウの移動ルート上にあります。 一角サイ(Greater One-horned rhinoceros)も、タライ平原内の国立公園で見ることが出来ます。東部タライにあるコシタップ野生動物保護区の野生の水牛(Wild buffalo)は、極めて少ないとされていましたが、近年の報告によればその数は増えつつあるとされています。ロイヤルベンガルタイガー(Royal Bengal Tiger)や一角サイ(Greater One-horned rhinoceros)は絶滅危惧種に指定されており、特にロイヤルベンガルタイガー(Royal Bengal Tiger)を国立公園で見つけるのは非常に困難です。クマ(bear)やレオパルド(leopard)は、たまに見ることがあります。一方で、ガンジスイルカ(Gangetic dolphin)はナラヤニ川やカルナリ川で見かけることが出来ます。上部ヒマラヤでは、滅多に見られないユキヒョウ(snow leopard)が生息しています。標高の高い地点に居るその他の生物としては、ヤク(yak)、ブルーシープ(blue sheep)、ヒマラヤヤギ(thar)、ジャコウジカ(musk deer)等が居ます。南部タライ平原には、ナマケグマ(sloth bear)、サル(monkey)、ヤセザル(langur)、チッタル(chital、シカの一種)、マダラジカ(spotted deer)、吠えジカ(barking deer)等が生息しています。ネパール南西部に位置するスクラファンタ野生動物保護区ではインドヌマシカ(swamp deer)が見られ、バルディア国立公園では絶滅危惧種のインドレイヨウ(blackbuck)を見ることが出来ます。インドレイヨウ(blackbuck)については、ネパール政府が特にバルディア地区に15.95平方キロメートルに渡るインドレイヨウ保護区を宣言して、この種を守ろうと努力した結果、繁殖が進みつつあります。ネパールで見られるほ乳類はこのほかにも、ハイエナ(hyena)、ジャッカル(jackal)、イノシシ(wild boar)、アンテロープ(antelope)、ヤマネコ(wild cat)、レッサーパンダ(red panda)、カワウソ(otter)、オオカミ(wolf)等々、非常に多岐に渡っています。これらのほ乳類動物の大半はチトワン国立公園で見ることが出来ます。レッサーパンダはランタン国立公園とカンチェンジュンガ保護区で見ることが出来ます。カワウソ(otter)はララ国立公園内のララ湖で見ることが出来ます。ドルパタン狩猟指定区ではブルーシープ(blue sheep)とヒマラヤヤギ(thar)を見ることが出来ます。 .

は虫類
ネパールには二種のワニの固有種が居ます。一種はガリアル(gharial)で、魚類を補食しており、細長い鼻部を持っています。もう一種はヌマワニ(marsh mugger、沼わに)で、捕らえたものはなんでも食べてしまう雑食種です。ガリアル(gharial)については繁殖プロジェクトが成功し、絶滅を逃れることができました。ネパールに居る蛇の種類としては、コブラ(cobra)、雨傘ヘビ(krait)、マムシ(viper)、インドパイトン(Indian python)等があります。その他のは虫類としてはカメ(turtle)、オオトカゲ(monitor lizard)が居ます。これらの は虫類生物の中には、チトワン国立公園やバルディア国立公園で見られるものも居ます。

鳥類
ネパールで観察記録のある鳥類は874種にものぼります。驚くことに、このうちの半分がカトマンズ盆地で観察されたもので占められています。とはいえ熱心なバードウォッチャーであれば蝶類観察以外には目もくれず、ネパール国内をくまなく歩くのも良いかもしれません。ネパールにおいては、南部タライでも中間丘陵地帯でも、さらには高地北部ヒマラヤでもバードウォッチングが可能です。

カトマンズ盆地の中でも鳥類の活動が活発な場所は4ヶ所ありますが、まずはカトマンズ中心を流れるバグマティ川河畔か、バクタプール下を流れるマノハラ川河畔から始めてみると良いでしょう。この2つの川沿いで見られる鳥類は、シラサギ(egret)、アオサギ(heron)、カワセミ(kingfisher)、トキハシゲリ(ibisbill)、タカブシギ(wood sandpiper)、 チドリ(plover)等です。
br/> チョバル峡谷も、人里から遠いために鳥類の活動にはうってつけの場所となっており、観察地点としては格好のエリアです。プルチョウキは希少種ズアカキヌバネドリ(read-headed trogon)が2000年4月に観察されたことで知られています。ここはカトマンズ盆地内から18km南東の標高2,760mの場所で、ゴダワリ経由で行くことができます。丘の斜面には見事な植物相が見られ、鳥類も豊富に棲んでいます。この地域だけで90種程度の観察記録があり、その中にはネパールで見つかるまでは絶滅したと考えられていたタテジマヤブチメドリ(spiny babbler)が含まれています。このほかのネパールの鳥類を少し挙げると、セアカチメドリ(cutia)、クマタカ(mountain hawk eagle)、チャバラアカゲラ(rufous-bellied pied woodpecker)、キバネダルマエナガ(black-throated parrotbill)等になります。冬には水鳥も渡ってきて、春になるまでタウダ湖(Tauda lake)に留まります。

上記以外の観察スポットとしては、カトマンズ盆地の12km北にあるシヴァプリ国立公園と、カトマンズ盆地の北西にあるナガルジュンの森があります。シヴァプリ国立公園へは、スンダリジャルから行くか、ブダニルカンタから行くか、2通りのルートがあります。東部タライのコシタップ野生動物保護区を流れているコシ川沿いの一帯は水鳥類に格好の住処を提供しており、非常に広い範囲の鳥類が住みついています。ここでは、例えばカモ類(duck)だけでも26種類が生息しています。早朝や夕暮れの静閑な空気の中、散歩をしながら、あるいは水面を静かにボートで滑るようにして、水辺の鳥たちを見ることが出来ます。ここではカタジロトキ(black ibis)、ハチクマ(honey buzzard, or honey kite)、ミサゴ(osprey)、アビシニアコウライウグイス(black-headed oriole)、ハヤブサ(peregrine falcon)、ヤマウズラ(partridge)、アカツクシガモ(ruddy shelduck)、コウノトリ(stork)、ハゲワシ(vulture)、ワシ(eagle)等を始め、485種類もの鳥類が観察されています。

チトワンはタライ平原として知られるネパール南部の低地にあり、ここにバードウォッチングの最適地の一つとして知られるチトワン国立公園があります。ポカラではフェワ湖やベグナス湖の岸辺周辺の森が最適とされ、中でも人家の少ない辺りは最高のバードウォッチングポイントです。冬場のフェワ湖周辺では、シラサギ(egret)、アオサギ(heron)、セキレイ(pipit)、ホオジロ(bunting)やカモメ(gull)、アジサシ(tern、カモメの一種)、カモ(duck)、それにタカ(falcon)等を見ることが出来ます。もう一つのベグナス湖の岸辺には傾斜地があり、ここが湿地帯になっていることから、カモ類(duck)、レンカク(pheasant-tailed jacana)、ハピーキマユコビトサザエ(happie grey bellied tesia)、ヒヨドリ(bulbul)等が見られます。

バルディア国立公園はサラノキ(sal、沙羅双樹)や森林で覆われており、川辺の樹林帯や草原はチトワン国立公園と似通っていますが、なんと言っても別格なのは、ここには雄大なカルナリ川が流れていることです。このカルナリ川へボートでこぎ出せば、アオサギ(heron)やウ(cormorant、鵜)やコウライウグイス(oriole)その他の様々な野鳥を見ることが出来ます。さらに高度の上がったトレッキングルート周辺でのバードウォッチングも結構でしょう。チャイロカッコウハヤブサ(Jerdon’s baza)などの観察記録があります。

またルンビニでは過去数年にわたって、保護団体によるオオヅル(sarus crane)の保護活動が行われてきました。ここではオオヅル(sarus crane)その他の水鳥の避難地として、わざわざ湿地帯を建設したほどです。さらにチトワンでは絶滅危惧種のハゲワシ(vulture)を汚染した食品から守るために、ハゲワシレストランとして知られる場所を建設し、安全な生肉を提供しています。 ちなみにネパールの国鳥はテイオウキジ(impeyan pheasant)で、地元ではダンフェ(daphe)と呼ばれています。


ネパールでは150年の長きにわたって蝶の研究が行われて来ましたが、当初の標本収集と研究はほとんどが英国人によって行われ、そのうちの数人は当地在住の英国人でした(つまりは当時の英国領事でした)。1950年以降になると、日本人が、学術遠征隊の登山家としてこの標本収集活動に参加するようになり、これらの活動は最終的に1974年にスワヤンブナートに設立された、トリブバン大学自然科学博物館として結実しました。

研究記録では、ネパールには世界で15科(family)ある蝶の種族のうち11科が生息しており、その種類は500種以上で、21世紀の今でもなお新種が見つかり続けています。 「ネパールの蝶を知り尽くすことは出来ない。なぜならネパールの蝶は次々と、いきなり出てくるから」 と言われるほどです。1974年から1981年までのたったの7年間で、24もの標本や科属種が観察記録に加わりました。1981年の発見は2種だけですが、一つはブルーダッチェス(blue duchess)、もう一つがシッキムヘアストリーク(sikkim hairstreak)で、特に後者のシッキムヘアストリークはシッキム地方からやってきたただ一つの検体であり、ゴダワリで捕獲されたこの雌蝶によって発見されたものです。さらに1986年には完全新種のチャイニーズヘアストリーク(Chinese hairstreak)が発見されています。蝶の検体収集はカトマンズ盆地内でしか許されていなかったため、当初の研究文書も盆地しか取り扱いしていません。1950年にネパールが鎖国を解き、学術遠征隊と限られた旅行客のみを受け付け出して初めて、検体収集家は盆地外での収集活動を始めることができたのでした。

ネパールは高度を基準にすれば5つの区域に分けることができ、また季節で言えば春、プレモンスーン、夏期モンスーン、ポストモンスーン、秋、そして冬に分けることが出来ます。

カトマンズ盆地の気候は冬でも18℃程度くらいにはなるためかなり暖かく、蝶類はほとんど一年中見ることができます。とはいえベストシーズンはというと、まず3月下旬から4月にかけて、次に5月半ばから6月半ばにかけて、そして8月下旬から9月にかけて、となります。盆地内にはまだ樹林帯の残るエリアがあり、ここが蝶類の格好の住処になっています。チョバル峡谷近くの開けた場所もその一つですが、この辺りは一般的な東洋種が主な生息種です。ネパールの蝶類生息分布は、生物地理区でいう旧北区系の蝶類が全体の10%程度で標高3,000m以上に生息しており、90%の東洋区系がスワヤンブやゴダワリの麓、ゴダワリを流れる森の水辺やナガルジュン、ブダニルカンタ、スンダリジャル、さらにはプルチョウキやジャマチョウクやシヴァプリなどの樹木のある丘の上や、ナガルコットやスルヤビナヤクやチャンドラギリあたりの、開けた低木帯などに生息しています。

カトマンズ盆地内の生息種のうち、20程度が絶滅危惧種あるいは脆弱種としてリストアップされていますが、盆地外のいろいろな場所に散在している国立公園内などでも蝶類は極めて豊富で、人里離れた人家の少ない場所などは自然環境も平穏なため、ゆっくり座って蝶類を観察するのには理想的な場所といえます。

植物相
2006年からの記録によると、ネパールには231科、1,590属、6,391種類の開花植物があります。1997年にはこれらはそれぞれ、194科、1,447属、4,259種類でした。また開花植物は全植物の2.76%、シダ類は5.15%となっており、1997年当時の記録はそれぞれ2.36%、4.45%となっています。

維管束植物(vascular plant)は保護区内に199科、1,034属、2,532種類が見られます。このうち130種類は固有種と見られています。
生態系と植物群落の観点から分類すると、ネパールは4つの植物帯に分けることが可能で、それぞれ、1)西部、2)北西部、3)中央部、4)東部、となります。生物気候学的には温暖湿潤気候から乾燥気候、高山気候まで20地域程度に分割が可能です。 植物相に特に関心のある方々のために高度を基準にして大きく分類しておくと、熱帯(1,000m以下)、亜熱帯(1,000-2,100m)、温帯(2,100-3,100)、亜高山帯(3,100-4,100)、高山帯(4,100-4,500)、そしてそれよりさらに上の高山ステップ帯となります。
ネパールには399の固有種があるとされており、そのうちの63%はヒマラヤの高峰帯のものです。残りのうち38%が丘陵帯のものとされ、タライ平原やシワリック地帯のものは全体のわずか5%程度とされています。また中央部では固有種の66%を見ることが出来ますが、西部では32%、東部では29%とされてます。

化石
地質学的世界でいうシャリグラムとは「今は無きテチス海(古地中海)の海底が何百万年も前に隆起して、ヒマラヤ山脈として最初に出現した際にできた化石であり、その素になっているのは今では絶滅してしまった頭足軟体動物種が住まいにしていた渦巻き状の内部に仕切り膜をもつ貝殻である」ということになります。 しかしネパールの人々にとってのシャリグラムは、多分に宗教的な意味合いの方が強いものです。というのもシャリグラムは、ヒンドゥー教の神々の中でも中心的存在と言って良い、ヴィシュヌ神の化身とされているからです。2000年以上前に著述された聖典プラーナ(purana)に於けるスキャンダ(scanda)やパダム(padam)、バーラハ(baraha)などの中では、シャリグラムについて実に精緻に説明がなされており、色や形やサイズなどによって、多種多様に分類されています。 シャリグラムはダモダール・クンダ(Damodar Kunda)のすぐ上にあるニルギリ地方の北方で見つけることができます。またドラルガット(Dolalghat)のトゥリベニ(Tribeni)の上を流れるカリガンダキ川の水流の中でも見つかりますが、もっとも知られているのはジョムソム(Jomsom)のカリガンダキ川の河畔沿いで、ここではムクティナート(Muktinat)への巡礼者がいろんなシャリグラムを探し求める場所でもあります。

薬草
-薬用植物- ヒマラヤとアーユルヴェーダの不思議で独特なつながりを思うと、ヒマラヤの懐に抱かれた国、ネパールは、特に重要な意味を帯びて来るのがわかります。薬用植物(以下薬草)は古来、地域ごとの伝統医療やアーユルヴェーダ薬やホメオパシー医療(同毒医療とも)などに用いられ、それら薬草の多くはまた、アロパシー療法(逆症療法とも)にも活躍の場を見いだして来ました。

ヒマラヤ地帯では何百種類もの薬草が入手可能な一方、ここヒマラヤでしか入手出来ない薬草も数多くあります。これらのハーブ薬への需要は高く、栽培することも可能ではありますが、薬用植物の種の保存にも十分配慮がなされるべきでしょう。
 
ネパールの薬草の中でも珍重されるものは、高山・亜高山帯の薬草:トリカブト(aconitum spp)、コオウレン(picrorrhiza scrophularaeflora)、センブリ属マルチカウリス(swertia multicaulis)、レウム・エモディ(rheum emodi)、カノコソウ(nardostachys jatamansi)、シナマオウ(ephedra gerardiana)、冬虫夏草(cordyceps sinensis、ネパールではyassagumba)、ヒメノヤガラ(dactylorhiza hatagirea)等があります。
熱帯・亜熱帯の薬草:テルミナリス(terminalis)、ナンバンサイカチ(cassia fistula)、カッシャカテキュ(cassia catechu)、ベルノキ(aegles marmelos)、ラウオルフィア(rauwolfia serpentina、インドジャクボクとも)、インドスグリ(phyllanthus emblica)、リシヌスラケモスス(ricinus racemosus)、ショウブ(acorus calamus)、アカシアコンシニティー(acacia concinnity)、ビュートモンスター(butte monster)等があります。
温帯の薬草:インドカノコソウ(valeriana wallichii)、メギ(berberis)、チョウセンアサガオ(datura)、ソラヌム属(solanum)、アカネ(rubia)、フユザンショウ(zanthoxylum armatum)、ゴーセリアフラグローティッシマ(gaultheria fragrautissima)、ハエトリソウ(dioscorea deltoidea)、キンバイザサ(curculigo orchoides)等があります。
これらの薬草類が豊富に見つかる土地は、 ・ナワルパルシ郡/チトワン郡/バルディア郡/ダヌーシャ郡のタライ平原地帯・マクワンプール郡/シャンジャ郡/カスキ郡/ラムジュン郡/ドラカ郡/パルヴァット郡/イラム郡/ラメチャップ郡/ヌワコット郡の丘陵地帯、・ドルパ郡/ムグ郡/フムラ郡/ジュムラ郡/マナン郡/ムスタン郡/ソルクンブ郡の高山地帯、 等になります。

ラン(蘭)
古代ローマの偉大な哲学者プラトンの弟子だったテオフラストスは、初めてランの球根を見た時にその形をおもしろがり、ギリシャ語で「睾丸」を意味するオルキスという名前をつけました。

今日、世界には500~600属の蘭種、20,000~30,000の蘭の花名があるとされており、まさに世界最大の花科と言って良いでしょう。ネパールにはこのうち57属(うち27が陸生種、30種が着生種)が植生しており、この中には岩生種もいくつか入っています。蘭の植生はヒマラヤの麓からタライ平原まで、ネパールのあちらこちらの生態系の非常に広範なエリアに広がって、自然愛好家や園芸家をお迎えしています。7月から8月にかけて、葉を2枚しか持たず、茎の先にパープルの花を咲かせる美しい陸生蘭があるかと思うと、西ネパールには同じ花属なのにオレンジグリーンの花を2月~3月の頃につけるものもあります。

3~4月のゴダワリ(Godavari)では芳香あふれる青々とした蘭が美しい花をつけ、シヴァプリ(Shivapuri)やカカニ(Kakani)では、ホワイトやペールイエローの花弁を持つ蘭を見ることが出来ます。9~10月頃のスンダリジャル(Sundarijal)では、緑に生い茂る蘭にパープルの花弁が縞模様のように垂れ下がる姿を目にし、11月頃にダマン峠(Daman)へ向かえば、うすい藤色の蘭が沿道をベルト状に埋め尽くしている中を駆け抜けていくことになります。ここに述べた場所は、カトマンズからほんの数時間で行けるところばかりです。また足を伸ばしてダンクタ(Dhankuta)やヘタウダ(Hetauda)へ向かえば、山吹色に輝く蘭花を見ることができます。あるいはカンドゥバリ(Khandbari)では花弁の周りが次第に色薄くなっていくパープルブラウンの花弁をもつ蘭に出会うこともできるでしょう。

とにかくネパールは豊富な蘭花が全土に広がって植生している恵まれた国です。中でもコチョウラン(胡蝶蘭、dedrobium)が最大の蘭花属で、その次がハベナリア(habenaria)、次いでバルボフィラム(bulbophyllum)、の順になっています。アントゴニウム(anthogonium)、ヘミピリア(hemipilia)、ルチア(lucia)などの、24以上に及ぶと言われる単一性植物種科の蘭も多様に見ることが出来ます。

シャクナゲ
4月から5月の春真っ盛り、ネパールのあらゆる丘陵地帯が色鮮やかな花々で染め上げられます。シャクナゲ(rhododendron)はネパールの標高1,200m以上の丘で見られる花で、中でも特に中級山岳地帯の2,000~4,000mの高度帯にあるシャクナゲには原種が多く、現地ではグランス(gurans)と呼ばれています。

シャクナゲを目的としてトレッキングに行くなら以下の4大ルートがお薦めです。 1) ミルケダンダ(Milke Danda)からジョルジャレヒマール(Jaljale Himal)(タムール川とアルン川の間に入り込んでいる山岳帯を横切って進むルート)2) タムール川上部渓谷3) マカルーバルン国立公園4) ランタン国立公園内、ランタン渓谷

ネパールには30種のネパール原産種のシャクナゲがあり、中でもネパールでしか見られない固有種としてR.ローンデシト(R. lowndesit)があります。このシャクナゲの花弁はレモン色やクリーミーイエローをしており、形の良い短い花が一つあるいは二つペアで茎の上に咲いています。西ネパールの乾燥地帯、ムクティナート(Muktinath)やポクスンド(Phoksundo)周辺で見ることが出来ます。

タムール川上部渓谷へのシャクナゲトレッキングは、まずバドラプールまで飛行機で移動して、その後お茶の産地として名高いイラムまで車で走り、カンチェンジュンガ地域の南西側からタムール川水系の上部渓谷へ入り込む形でスタートします。イラムで足を留めて、お茶の栽培や茶加工の工程見学等をするのも楽しいでしょう。トレッキングが始まれば、音に聞こえたこの渓谷の輝かんばかりのシャクナゲ樹林の壮麗な風景に引き込まれることでしょう。
 
カトマンズに最も近い場所としては、車で5~6時間の標高2,000mの街、ドゥンチェ(Dhunche)もあります。ランタン渓谷上部へトレッキングをする場合はこの町から歩き出しますが、この渓谷には9種類のシャクナゲが植生しています。