彫刻

ネパールの彫刻作品群は、ネパール芸術の黎明期から近代に至るまでの変遷史をそのまま反映しています。数多くの彫刻作品がタライ地方で発見されていますが、これらの彫刻作品によって、ネパール草創期の宗教的事実を理解することができます。ネパールではほぼ全ての彫刻作品が宗教上の偉人や神々を彫ったものであり、この事実から、彫刻家自身が宗教に大きく影響され、強い信仰心を抱いていたことが読み取れます。

ネパールの彫刻はリッチャヴィ王朝時代(西暦330~879)に絶頂期を迎えました。
この時代の石像や銅像、青銅像などの作品群は、丸い顔につり上がった目を持っているのが特徴です。またリッチャヴィ王朝時代の彫刻のもう一つの特徴は、そのシンプルさです。衣服や装飾品は非常に控えめで、例えば多くのヒンドゥー教の神像は、ドティ(スカートのような腰布)を着けているのみです。仏教の神像は、長いサンハティス(肩からかけるだけの、仏教徒が着用するサフラン色のローブ)での姿が彫られています。リッチャヴィ王朝時代の彫刻家たちは好んで玄武岩を材料に使い、彫り終えた後おそらく鉄の粉をやすりがわりに使用して表面をなめらかにし、最後にニスを塗って作品を仕上げています。この時代の彫像の手足は非常に美しく仕上げられており、鑿(のみ)の跡がわずかでもわかるようなものは一体も見つからないほどです。リッチャヴィ王朝時代の作品のひとつの最高例として、カトマンズの北8キロに位置するブダニルカンタで見ることが出来る「ヴィシュヌ神仰臥像」があります。カトマンズのラジンパットではヴィシュヌ・ヴィクランタまたはドワフといわれる化身の彫像が見られます。

ブダニルカンタのヴィシュヌ神仰臥像は、大きな水鉢の中に横たわっており、この水鉢の土台は伝説に出てくるセスの11頭首の巨大ヘビの、よじれた胴体の一部を表わしています。伝説によると、17世紀の国王プラタップ・マッラ王の夢に出てきたヴィシュヌが、いかなるネパール国王もヴィシュヌ神仰臥像を見に訪れてはならないこと、見れば直ちに死んでしまうと警告した、と言われています。

ネパールの彫刻家は石、金属、木材のほかにもテラコッタ(赤土材の素焼き)まで、多くの素材を使用しています。金属彫刻の場合は、たいてい分厚い金めっきが施されており、仮にめっきが剥がれていても赤みを帯びた緑青(ろくしょう)を認めることが出来ます。このことは素材に高純度の銅成分が含まれていることを示しています。これらの彫刻作品の多く、特に後期の作品には、宝飾用の石(宝石)による象眼装飾が施されています